大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和26年(オ)878号 判決 1954年2月11日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由第二点中、同一審級において同一証人を再び尋問する場合においても、尋問事項を異にする限り再び宣誓をなさしめることを要することは、所論のとおりであるが、宣誓せしむべき証人を宣誓せしめずして尋問した場合と雖も、当事者が遅滞なく異議を述べないときは、責問権を失つたものというべきである。それ故、異議を述べなかつた上告人は責問権を失つたのであるから、原判決が右証人の証言を事実認定の資料としたことは正当であつて、原判決には所論の違法はない。

同三点中、所論のような文書が原判決の判断の基礎となつたものとする独断に基き違憲をいうが、かかる前提を認める証跡はないから、結局違憲の主張は、その前提を欠くものである。本訴の提起された昭和二三年九月二四日当時においては、五千円を超える事件は簡易裁判所の管轄に属しない(裁判所法三三条はその後昭和二十五年に改正になつた)から、本件を以て簡易裁判所管轄事件であるとの所論は誤りである。

同五点は所論民事上告審判特例法は違憲であるというが、上告理由は原判決の法令違反を理由とすべきものであるから、所論の主張は上告理由として認めることはできない(判例集五巻一一号五七五頁)。その余の各論旨は、すべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二十五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例